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中部大学の学術誌アリーナ2011第12号、「加藤秀俊をめぐる環」が送られてきました。ぱらぱらと読んでいて、「戦後」について、感じたことがあるので、書いておきます。 20年ほど前、ベトナムに初めて行ったとき、ベトナムにとって戦争は、もちろん対米のベトナム戦争のことだろうと思っていたのですが、彼らにとって、生々しいのは、ベトナム戦争後に起こった、ベトナムと中国の国境紛争でした。ハノイの人民委員会の委員長、市長さんみたいなものですが、国境紛争時の英雄とのことでした。数年前、日本人は、朝鮮戦争のことは、ほとんど知らないし、話題にしないなと思ったものです。韓国の人たちにとっての戦後は、朝鮮戦争後のことなのだろうと思うことがあります。インドネシアでも、第二次世界大戦のことよりは、60年代の共産党排撃、中国人排斥のことの方が、ナマナマしいようでした。中国も、本音の部分では、第二次大戦よりは、文化大革命の混乱の方が、重いのやもしれません。彼らにとっての戦後は、きっと、鄧小平の改革後なのでしょうね。台湾だって、1947年2月28日に台湾の台北市で発生し、その後台湾全土に広がった、本省人（台湾人）と外省人（在台中国人）との大規模な抗争とその後の戒厳令が、現代に尾をひくたいへんなことだったようですね。最近まで、日本人は知らなかった。あるいは、知ろうとしなかった。相対的に、太平洋戦争が、軽くなっているので、台湾の人たちは、日本人に、そんなに悪感情を持たないのではないかと思います。カンボジアの内戦だって、90年代になってやっと知るようになった。フィリピンも、50年代にフクバラハップという対日抗戦した英雄たちを葬ったのでした。それぞれの国も、自分の歴史を持っているので、日本人の歴史観には、間尺が合わないのだろうと思いました。戦後という言葉を、使っているうちに、そこに立ち止まって、世界を見ることをしなかった、日本人にアルマジロを感じるわけです。ただ、大正生まれのおやじと話していると、どうしても第二次大戦に立ち止まっているので、個人史とはそんなものだろうと思います。最近では、英語で、太平洋戦争後という意味の、日本で使う普通の意味での「戦後」を使う場合、特に外人さん相手には、ちょっとちがうかなと逡巡しながら、使う感じになっています。