加藤秀俊 著作データベース
道楽としての出版（アンケート）
発行年月: 200408
掲載 : 本とコンピューター 2004年秋号
発行元 : 大日本印刷
道楽としての出版 （季刊「本とコンピュータ」2004年秋号）
アンケート 19人にきく 「本」のために「コンピュータ」はなにができたか
漁師が魚を釣るのは｢職業」である。水揚げがないと生活にかかわる。だが、趣味人がわざわざ入漁料をはらって釣り糸をたらすのは「道楽」である。生計の手段ではない。出版の世界も似たようなもんじゃないか、とおもっている。原稿料で生活する文筆業者が出版社から出す本は「職業としての出版」である。しかし、自由に文章をかいて、パソコンで版下をつくって勝手に出版するのは「道楽としての出版」である。DTPというやつである。多少おカネはかかるが、元来が｢道楽」なんだからそれでいいのである。
道楽の釣りなんかたいしたことはあるまい、などとバカにしてはいけない。大物が漁師の独占物だとおもったらおおまちがい。ほんとうに理解できる読者が世界中に百人、といった高度の専門学術書なんかは道楽の極致。これらはおおむねDTPかその親類とみてさしつかえない。「自費出版」に傑作がおおいゆえんである。
加藤秀俊著作データベース
文書管理番号: 2981