加藤秀俊 著作データベース
品性なき企業文化
発行年月: 20030925
掲載 : フォーブス１１月号
発行元 : ぎょうせい出版
テレビをみていて、なんともやりきれないのは、タレントといわれるひとびと、とくに若いひとたちの挙措動作、言語風俗、ことごとくの下品さである。女は髪ふりみだして、おヘソ丸出し。男は顔のあちこちにピアスをくっつけ半ズボンで大股をひらいている。口にすることばは「エエ？マジでえ？ウソー！」など意味のない叫び、あるいは「ふざけんじゃねーよ」などの罵声。
こういうのをむかしは「不良」といった。いまテレビ画面にでてくるのは、その不良少年、不良少女風俗以外のなにものでもない。これが国家の免許事業たる放送の世界を大手をふってまかり通っている。そこには品位、風格、といったものはすこしもない。
さらに滑稽かつ悲劇的なのは、中高年のタレントやアナウンサー、司会者までがせっせと若い連中のマネをして不作法、下品に輪をかける。放送は一国の品性をうつす鏡である。お笑い番組、クイズ番組、ＣＭ、どこをみてもまことに腹が立つ。日本はここまでバカになったのか、とひたすら慨嘆する。
しかし、画面にでてくるタレントというのはしょせんサルのようなもので、調教されたようにうごいているだけ。しからば、これらサルどもを調教しているのはだれか。この世界には芸能プロダクション、広告代理店などが複雑にからまりあっているから、その正体ははっきりしないが、最終的にはこれら下品な行動を演出し、それに責任を負うべき主体は番組を提供しているスポンサー、すなわち企業、ということになるのではないか。
べつなことばでいえば、企業文化に気品がなくなったことの反映として下品な風俗が跳梁跋扈するのである。日本の企業はかっての気品と気骨をうしなったのだ。まったく、どうもこまったことである。
加藤秀俊著作データベース
文書管理番号: 2682