加藤秀俊 著作データベース
国字問題
発行年月: 19610513
掲載 : 神戸新聞
発行元 : 神戸新聞社
国字問題
国語国字問題について議論がやかましい。三週間ほどまえには、テレビでも大いにエキサイトした討論が行われた。賛否両論、いずれも、言い分はもっともである。
しかし、漢字を使うことでわれわれがどれだけ不便な思いをしているかは、もっと反省していい。私事にわたるが、わたしの現住所は、太秦垂箕山町というところだ。ところがこの文字を、正しく読める人はあまりいない。東京のさる学者は、私に電報を打つとき困るから、とわざわざフリガナを求めて来た。
読めないのは無学だからだ、などどバカな理屈をふりまわすのはやめよう。大事なのは無学、有学の別なく、みんなが読み書きできるような文字をつくることである。わたしは自分の一存で、このごろはじぶんの町名をもっぱらカナで書いて手紙を出すことにしている。
加藤秀俊著作データベース
文書管理番号: 2504