加藤秀俊 著作データベース
１０冊めの新書と「著作目録」
発行年月: 19900910
掲載 : ＡＢＣ ＪＯＵＲＮＡＬ
発行元 : 青山ブックセンター
一〇冊めの新書と著作目録 加藤 秀俊
中央公論社から『人生にとって組織とはなにか』といういささかもってまわったような題名の新書を出版していただいた。はやいもので、この新書シリーズがさいしょにでたのは一九六二年のこと。もう三〇年もむかしのことだ。
その一三冊めにわたしの書いた『整理学』という本がでた。おかげで、この本はこれまで版をかさね、ついきのう、六四版の増刷の知らせがきたところだ。それからあとも、縁あって、わたしはこの中公新書をほぼ三年にいちどの割合で執筆してきた。こんどの本がちょうど一〇冊めになる。これらの本のなかでよく読まれたものもあるし、あまり読まれなかったものもあるのは当然だし、こんどの本がどうなるかはわからない。内容からいうと、この本で主張したかったのは、現代という時代が組織の時代であり、われわれひとりのこらず組織というものから自由ではありえない、ということであってかんがえてみればあたりまえのことを書いたにすぎない。だが、通常の組織論とちがって、わたしはこの本を人生の立場から、いわば人生論として書いたつもりである。
だが、わたしにとってそれよりも感慨がふかいのはこれまでじぶんの書いた著作すべてをとりまとめた『加藤秀俊著作目録』ができあがったことだ。学術論文から新聞のコラムにいたるまでとりまとめてみたら五千点にちかい。厚さも二三〇ページほどになった。これも中央公論社から発売されることになった。むかしふうにいえば、ことしわたしは還暦をむかえた。これからも著作活動はつづけるが、一〇冊めの新書はわたしにとってのひとつの節目のような気がしている。
加藤秀俊著作データベース
文書管理番号: 25