加藤秀俊 著作データベース
日和見（宮田登）
発行年月: 19930401
掲載 : スミセイベストブック ７月号
発行元 : 住友生命
書評 加藤 秀俊
宮田登『日和見』（平凡社）
「日和見」というのは一般にどっちつかずのご都合主義というふうに理解されている。しかし、もともとこのことばはその日その日の吉凶を占う巫術と関係していた。要するにシャ−マニズムなのである。この書物は民俗学の知見を動員して日本文化のなかにある「日和見」の諸相を解明してくれる。いっぽうには天皇制につながるシャ−マンの伝統があり、また他方には庶民が自力でつくった「日和見」がある。われわれがふだん知っていて、しかもあまり意識の表面にでてくることのない習俗があますところなく紹介されている。
この本のすばらしいところは、こうした民俗学の諸問題を手ぎわよく整理した学術書でありながら、だれにでも理解できるような親切な解説がこころみられていることである。「日和見」というこの本の主題を勉強するだけではなく、現代の民俗学を学ぼうとする読者にとって絶好の入門書だといってもよい。日常生活と学問の接点も本書をひもとくことであきらかになってくるだろう。
加藤秀俊著作データベース
文書管理番号: 1592