加藤秀俊 著作データベース
物見遊山と日本人（神崎宣武）
発行年月: 19920101
掲載 : スミセイベストブック
発行元 : 住友生命
書評 加藤 秀俊
神崎 宣武『物見遊山と日本人』（講談社）
レジャー時代だというので、われわれはかなりよく遊ぶようになった。しかし、日本人は季節にあわせてさまざまな遊びを年中行事にしてきたようである。俗に「雪月花」などともいう。なにかにつけて外出したり、あるいはあつまったり、われわれの祖先ははみごとな遊びの伝統をつくってきたのであった。そのもろもろの「物見遊山」の諸相を江戸時代にまでさかのぼって、過去を再現しながら現代のレジャーの原型を示唆してくれるのがこの本である。日本人ははたらきすぎだ、というのがもっぱらの世界的認識であるらしいが、この書物を読むと、はたらきすぎどころか、あそびすぎであった、という印象さえうける。引用されている文献のおおくは江戸期の随筆のたぐいだが、それと現代の新聞記事などをじょうずに交錯させながら日本人の遊びの歴史の連続性をわかりやすく教えてくれる。われわれの日常の生活をふりかえってみて、なるほどこんな前史があったのか、とびっくりするような部分もおおい。たのしい、そして教訓にみちた好著である。
加藤秀俊著作データベース
文書管理番号: 1591