加藤秀俊 著作データベース
教育と博物館
発行年月: 19921115
掲載 : 文化行政・再考
発行元 : （株）ＣＤＩ
文化行政についての意見 加藤 秀俊
教育と博物館
日本の自治体は「文化の時代」だというので、博物館や美術館を建設している。みごとなものがいたるところにあり、わたしなどはどこにいっても感動する。しかし、自治体のつくったこれら文化施設には決定的な欠陥がある。それは閉館時間があまりにもはやすぎることだ。おおむね午後５時。よくても６時には閉館してしまう。はたらいているひとびとが、しごとをおえてから博物館や美術館で勉強したり鑑賞したりしたいとおもっても、これではどうにもならない。開館時間は正午でもかまわないから、夜間にまで延長して市民に開放したら、ずいぶんありがたいのに、とおもう。
なぜそれができないのか、ときいてみると、それぞれの自治体の公務員には就業時間などについての規定があり、それに例外措置をとることがむずかしいからだ、という。なかには組合がやかましいから、などという理由をのべるひともいる。わたしにいわせれば、とんでもないことだ。行政がおこなうべきことは地域住民へのサ−ビスではないのか。住民の生涯学習のための機会を規則と組合が奪うなどというのは本末転倒もはなはだしい。そんなおろかなことをするのなら、もともと文化施設などつくらないほうがよろしい。いかがなものか。
加藤秀俊著作データベース
文書管理番号: 1590