加藤秀俊 著作データベース
カラスと都市
発行年月: 19910115
掲載 : ネットワーク・インフォーメーション
発行元 : 住友生命
タウン・ウオッチング
カラスと都市 加藤 秀俊
いま、わたしの住んでいる東京の都心部にはたくさんの問題があるが、とくに気になるのはカラス問題である。とにかく、カラスがやたらにふえたのだ。わが家のそばの自然教育園には、つい一〇年ほどまえまで、リスのような小動物もいたけれど、どうやらカラスの餌食になってしまったらしい。なによりも迷惑なのは、このカラスたちが清掃車のくるまえにゴミ袋をつついて、路上に散乱させること。さらに、カラスは頭がよくていたずらだから、人を襲うこともある。近所でカラスに追いかけられた人もいるし、襲撃された人もいる。都内のカラスの数は五千羽とも一万羽ともいわれるが、鳥獣保護法というのがあって、保護されているのだから、しかたがない。東京という都市は、人間に住みにくく、カラスにとって住みやすいところになったらしいのだ。おかしな世の中である。
加藤秀俊著作データベース
文書管理番号: 11